「被害からの回復」に関する犯罪被害者調査-オンライン調査の結果報告書
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本調査の目的は、犯罪被害にあったことで陥る心理的・社会生活状況、制度・支援の利用状況等についての実態を明らかにし、被害からの回復、よりよい被害者支援のあり方を探ることとした。対象は、1990年~2019年の間に犯罪被害にあい、オンライン調査の回答に同意した18歳以上(調査時)の被害者本人・家族・遺族(以下、被害者)。調査時から被害にあった時期が1年未満の者はスクリーニング時点で分析から外した。被害種別は、「暴力を伴う財産上の被害(強盗、恐喝など)」、「配偶者からの暴力(DV)」、「ストーカー行為等」、「性的な被害(強制わいせつ、強制性交等罪など)」、「交通被害(1か月以上の治療が必要となった、または家族が亡くなった被害)」、「傷害等の暴力被害(1か月以上の治療が必要となった被害)」、「殺人、殺人未遂」、「その他の被害」とした。なお、今回は身体犯の被害に焦点を当てたため、「財産上の被害(詐欺、窃盗など)」及び「性的な被害(盗撮、のぞきなど)」は、被害種別のスクリーニング時点で分析対象外とした。不特定多数の被害者の実態を把握するため、WEB調査の手法を採用した。調査対象は、調査委託会社クロス・マーケティング(学術調査部門)のアンケートモニター(以下、モニター調査)から回答を得た者と、被害者支援の関係機関・団体やマスコミの広報により一般(以下、オープン調査)から回答を得た者であった。両調査の対象から回収したデータについてデータスクリーニングを行った。調査の実施は2020年10月20日~同年12月末日であった。調査内容は、回答者の基本的属性、被害内容、被害前後の社会生活状況、被害直後から生活の再構築に至る過程の支援内容、刑事手続における支援の有無、被害後の心理的変化、加害者に対する思い、支援機関との関わりなどに関するものであった。回答データは、SPSS Ver.28統計ソフトで分析した。システム欠損値を除いて処理し、統計上の数値については有効パーセント(%)記載に統一した。統計処理では有意水準は5%とした。回答者の心理的・社会的状況を把握するために使用した尺度は、以下の3点である。(1) 日本語版ソーシャル・サポート尺度(短縮版)ソーシャル・サポートを測るため、Zimet,GDら(1990)が開発し、岩佐ら(2007)1)により信頼性・妥当性が検証されている短縮版の7項目から成る尺度を用いた。回答は7件法で求め、尺度全体ならびに下位尺度(「家族のサポート」「大切な人のサポート」「友人のサポート」)ごとに平均値を求め、得点化した(各項目1点~7点)。得点が高いほどソーシャル・サポートが高いことを意味する。(2) 日本語版―外傷後成長尺度(短縮版)(Japanese version of PTGI-SF-J)「心的外傷後成長(Posttraumatic growth)」を見るため、Cann,Aら(2010)2)が作成し、宅らによって邦訳された10項目からなる尺度(短縮版)を用いた(表A.参照)。これは危機的な出― 2 ―1.目的2.調査対象3.調査の手順と内容調査方法

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