福祉のあれこれ

2016年度・犯罪被害者支援と私

2017.3.30

 最近は犯罪被害者の支援やソーシャルワークとの関連に重きを置いて研究している。

 2016年4月には第3次犯罪被害者等基本計画が閣議決定され、被害者支援における社会福祉士をはじめとする専門職の活用、地方公共団体の総合的対応窓口の充実促進、中長期支援の充実などが盛り込まれた。2004年の犯罪被害者等基本法の成立から、さらなる展開の時期に入ったといえる。

 2016年度は私自身も被害者支援にかかわる講演やマスコミの取材など、貴重な機会を得たので振り返りたい。

 警察庁からの依頼を受けて、5月30日都道府県・政令指定都市の被害者支援担当者が集まる会議(犯罪被害者等施策主管課室長会議)において講演をした。テーマは、「今、被害者支援に求められること―ソーシャルワークの視点から―」。2016年2月~3月に地方公共団体の被害者対応窓口を対象に実施した全国調査の結果をもとに、対応窓口の実態や多くの相談を受けるためにはどのようなことが必要になるかなどについて話した。(講演録は以下のサイトを参照 https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/local/pdf/work2016/gi1.pdf

 その講演がきっかけで、富山県防災・危機管理課安全なまちづくり班からも講演依頼があり、被害者等支援関係機関の研修会において話す機会を得た。テーマは、「被害者支援を広めるために」。富山県では犯罪被害者等支援の取組を始めているものの、担当者の意識がまだ不十分な面もあり、関係機関・団体が集まるこうした研修会の開催は初めてということだった。当日9月2日の研修会には富山県内の検察庁、弁護士会、臨床心理士会、教育委員会、警察本部、民間被害者支援団体、市町村窓口などから30名近い出席者があり、講演のあとの事例検討のグループワークも含め、熱心に参加していただいた。

 私にとって富山は今回が初めての訪問で、東京から北陸新幹線で2時間余という近さにびっくり、立山連峰に囲まれ神通川を吹き渡る風が心地よかった。ちょうど「おわら風の盆」(300年余の歴史のある伝統行事)の時期でもあり、富山市内も活気がありおもてなしの雰囲気に包まれていた。ぜひまたゆっくり訪れてみたい土地の1つとなった。

 11月にはNHKテレビから、民間被害者支援団体の現状について取材を受けた。「犯罪被害者週間」(11月25日~12月1日)に合わせて民間被害者支援団体の活動を取り上げ、その実態と課題を当事者の声も含めて報道したいという。現在わが国には、全国被害者支援ネットワークに加盟する民間団体(支援センター)が全都道府県に48か所あり、地道な活動を続けている。この3月に「民間被害者支援団体の利用に関する調査」(科学研究費助成事業による調査、調査実施は2014年6月~8月)の報告書をまとめたのだが、その結果の一部、とくに支援センターの9割以上が財源確保を大きな課題としている点について話してほしいという依頼だった。

 担当のNHK記者と電話やメールで数回やり取りした後、撮影の本番。放映の前日の11月25日(金)夕方に、記者と録画・録音スタッフが大学の研究室を訪れ、早速撮影に入った。そして翌26日(土)朝『週刊ニュース深読み』という番組の中で、支援センターの活動の様子や被害者遺族の声とともに私のコメントも放映された。

 私としては、①支援センターは限られた運営財政の中で、被害者に寄り添ったきめ細かな支援をしている、②まだまだ認知度が低いので市民がもっと関心をもってほしい、③支援センター自体も専門性を高める努力を続ける必要があるといった点を強調したかったのだが、果たしてその意図は伝わっただろうか。

 ただ、記者は「なぜ、支援センターに国からの補助金が出ないのか」という疑問を強くもっていた。確かに、海外では国から財政的助成を受けて被害者支援を行っている団体・機関が多い。この疑問については、日本の今の財政状況、犯罪被害にかかわる団体にはさまざまな支援組織や当事者団体等があり、支援センターだけに運営資金を出すことは困難、助成を受けることで運営上の縛りも出てくるなどといった観点から、答えることが可能だ。しかし、被害者等のために有益な活動をしている支援センターに、公的な助成があって然るべき、安定した運営財源があってこそよい活動ができるのではないかという疑問はもっともで、今後海外との比較も含め検討していきたいと考えている。

 番組については放映直後から「見ましたよ、テレビに出ていましたね」とか「研究室がきれいでした」「ヘアスタイルが○○○…」等々の声や、遠方に住む大学時代の友人から連絡がきたりもした。さすがNHK、全国放送の影響の大きさを実感したが、何よりうれしかったのは「被害者支援の大切さがよく分かりました」という反応だった。

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