科研費による研究

2019~2022年度の研究

A.オンライン調査について

 「被害からの回復」に関するオンライン犯罪被害者調査(2020年10月~12月)について、回答いただいたみなさま、ご協力ありがとうございました。この調査は、①調査会社のモニター、②オープンな対象者に対して実施しましたが、①のデータについて結果がまとまりましたので報告いたします。PDFをご覧ください。これは『被害者学研究』第31号43-60頁に論説として掲載されたものです。

B.インタビュー調査について

 インタビュー調査は、オンライン調査の回答者の中からインタビューへの協力に同意してくださった方を対象に2021年6月~11月に実施しました。Web会議システム等を使ってインタビューを行い、被害者当事者、ご家族、ご遺族の計22名の方にご協力いただきました。コロナ禍の影響もありインタビューの実施、結果分析に時間がかかりましたが、結果がまとまりましたので報告いたします。

 協力者の方々の語りを大切にして、(1)被害の実態とその影響、(2)適切だった対応・支援、(3)不適切/不十分だった対応・支援、(4)被害後の変化・「回復」とは、(5)被害者支援への要望・社会への発信 という5つのテーマからまとめてあります。

 2019年度より日本学術振興会科学研究費の助成(基盤研究(C) 課題番号:19K02221)を受けて、以下のような研究を進めています。

1.研究課題:犯罪被害者の「回復」過程を促進する要因に関する研究

2.研究の目的・内容:

【問い】人は苛烈な体験を経た後に、どのように積極的な意味を見出すことができるか。【研究目的】犯罪被害者の「回復」過程を促進する要因について明らかにする。【研究内容】:平成31~33年度(3年間)(1) 過酷な体験後のポジティヴな心理的変容の概念整理を行う(2)被害者の心的外傷後成長(Posttraumatic growth、PTG)と「回復」を促進する要因を探るため質問紙調査(量的分析)とインタビュー調査(質的分析)を実施する(3)北米の研究結果と比較する。【研究成果】(1)	PTGと犯罪被害との関連を明らかにする(2)	被害からの「回復」過程を促進する要因を明らかにし、新たな研究的・実践的知見をもたらす(3)	北米の研究結果と比較し、PTGや犯罪被害からの「回復」に関するわが国の実証的研究結果を発信する。犯罪被害者に対する中長期支援、被害者学の進展に寄与

3.研究計画・方法

本研究では、まず逆境体験における「心的外傷後成長(Posttraumatic growth、以下PTG)」、「レジリエンス」、「意味づけ」といったポジティヴな心理的変容の概念整理を行う。次に、研究目的にそってA.オンライン調査(量的分析)、B.インタビュー調査(量的分析)を実施する(ミックス研究法)。申請時での目的、対象、内容はつぎのとおりである。

A.オンライン調査
  • 目的:被害者のPTGの程度と、「回復」過程を促進する要因を明らかにする。
  • 対象:①殺人・傷害致死などの暴力犯罪被害者、②性犯罪被害者、③交通事犯被害者を予定している。(いずれも現在民間被害者支援団体等が多く対応している被害者層であり、これらの被害ごとに多くの自助グループも立ち上がっている。)
  • 内容:対象者のPTGについてPTGI-X(改訂版)を用いて測る。被害直後から生活の再構築に至る過程における、情報、心理教育的介入、刑事手続支援、ソーシャル・サポート、インフォーマル・サポート等の社会資源について、役立ったか/役に立たなかったか、意味があったか/意味がなかったかを尋ねる。
B.インタビュー調査
  • 目的:被害者の「回復」やPTGを促進した要因を質的に探る。
  • 対象:調査Aの対象者のうち、PTGの高い群に入る被害者
  • 内容:個別インタビューにおいて、PTGの主観的内容や「回復」過程について自由に語ってもらう。