福祉のあれこれ

TBSラジオに出演して

2017.4.30

 2017年4月12日(水)TBSラジオ『荻上チキ・Session-22』に出演した。

 その2日前の10日午後、大学研究室に「TBSラジオの者ですが、犯罪被害者の問題について話してくれる人を探していて…」という電話があった。詳しく話を聞くと、何と荻上チキの番組スタッフ。ほぼ毎夜私も聞いている番組ではないか、俄然協力する気になった。警察庁が犯罪被害者への給付金支給制度の見直しに向けて初会合を開いたという報道を受けて、給付制度と今までの被害者支援の歴史、被害者問題を取り上げたいとのこと。テーマがあまりに大きいので、被害者学の碩学や給付制度に詳しい法学部教授の名前を挙げ、解説を頼んではどうかと助言した。

 11日再びTBSスタッフより電話があり、私が紹介した教授たちとは連絡がつかない、私に出てほしいという。迷ったが、被害者支援がらみで役に立てるならと思い、引き受けることにした。てっきり電話取材だと思っていたら、何と赤坂TBSスタジオでの生出演…! しかし、もう引き下がることはできない…。

 12日22時過ぎTBSに出向くと、メインセッションのテーマは「犯罪被害給付制度を警察庁が見直しへ― 犯罪の被害者や遺族の支援に、今何が必要なのか」に決まっており、このセッションの筋書き(進行内容、ポイント等が記されたもの)を渡される。スタジオのゲストは私のみ、その他に被害者等に対する経済的支援に詳しい高橋正人弁護士、民間支援団体を統括する全国被害者支援ネットワークの秋葉専務理事が電話出演することになっていた。筋書きはメインセッションが始まる直前までプロデューサーのチェックが入った。

 22時43分いよいよスタジオの中へ、思っていたより狭くうす暗い。入口ドアを開けて入ろうとした途端つまずく、防音のための段差があったのだ(これから1時間、大丈夫だろうか、早くも心配がよぎる)。テーブルをはさんで席に着くと、向かいに荻上さんと進行役(指示役)スッタフ、私の隣にアナウンサーの南部広美さん。温かく迎え入れられるのかと思いきや、それぞれ自分の役割に邁進中の真剣な面持ち、緊張感みなぎる場に一人どーんと放り込まれた感じだった。そう、ここは失敗が許されない生番組の現場なのである。

 南部さんの深い響き渡る声のアナウンスで、メインセッションが始まった。まずは犯罪被害者に対してどんな支援があるか、被害に遭った人はどう支援に結びつくのかといった点から始まり、高橋弁護士から今の犯罪被害給付制度の問題点、外国の事例との比較などの説明があった。こうした給付制度は、日本では一時的見舞金として始まった経緯があり、被害に遭った人々の長期にわたる「回復」にとって手厚いものになっていないこと、国が犯罪被害をどう捉えているかに深く関係していることなど指摘した。

 続いて、秋葉氏からは民間被害者支援団体について、相談支援の様子、支援の担い手の現状、財政上の問題などの話があった。私は、民間支援団体による支援の強みを強調するとともに、専門性の確保や地方公共団体の被害者対応窓口との連携・協力の必要性を話した。

 最後に、海外の被害者支援について尋ねられたので、アメリカには司法省にOVC(Office for Victims of Crime)があり支援体制が整っていることを説明した。日本にも法務省に被害者庁をつくろうという提案はあるが本格的な動きになっていない点にも触れた。

 23時42分、メインセッションは無事終了。あっという間の1時間だった。Session-22のリスナーとしては日頃、若い人たちがワイワイ軽快に番組をつくっている印象をもっていたが、荻上さんやスタッフ数名でテーマに切り込み、かなりの集中力をもって「綱渡り」的に番組を仕上げている面を垣間見ることができた。生番組では臨機応変さ、柔軟さ、そして何より頭の回転の早さが求められることを実感した時間でもあった。

 今回のメインセッションは、犯罪被害者の問題や支援に関するいわば「入門編」の内容であり、被害者支援の専門性、被害からの立ち直りと地域社会、加害者の責任と修復的対話等々、今後取り上げてほしいテーマも多い。荻上チキ・Session-22のさらなる「切り込み」に期待したい。

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