福祉のあれこれ
ヨガと私
2018.10.22
ヨガを始めて10年余りがたつ。50代に入ったころ呼吸が浅く疲れやすい体を何とかしたいと思い、太極拳?ヨガ?と迷っているうちに、場所や日程の都合でたどり着いたのがK先生のヨガ・クラスだった。たまたま選んだK先生、私より一回りほど年上だが実に若々しく、均整のとれた体をしておられた。どうしたらあんなにきびきびした美しい体が保てるのだろうといった好奇心も芽生え、クラスにはマジメに通うようになった。
ヨガというと、体を柔軟にしてさまざまなポーズをとるものとイメージしていたが、K先生のヨガ・クラスは違った。まず大事なのは吐く呼吸、自分のからだの声に耳を傾け、いのちに感謝しながらからだの手入れをしていく。「強い氣作り 柔らかい心身 深い呼吸」がK先生の理念だった。90分間のクラスはなかなかキビシク、マットの上で座ったり横になったりしながら身体を動かすだけなのに、毎回フウフウ~。しかし、終わったときは疲労感だけでなくすっきりした爽快感が残る。普段動かしていない部分を動かし、隅々まで血液が行き渡ったような感じ、気持ちまで充実してくる、それがK先生のヨガ・クラスだった。
また、K先生はクラスの生徒ひとり一人の身体(頭の中も含む)の個性をつかむのも早かった。その日の生徒たちの様子を見ながら、暮らしの知恵、ストレス解消やこころの解放の仕方などいろいろ話してくださった。K先生の何気ない話が私の悩みの解消につながることも多く不思議に思ったものだ。先生は私の動作から、心身の凝りや疲れを見抜いていたのかもしれない。
このヨガ・クラスを続けながら60代を乗り切っていこうと思っていた。ところが‥‥K先生は9月に急逝された。8月に入って体調を崩したのでしばらく療養すると聞いたのも束の間、訃報が届いた。K先生は早くからご自分の病気のことをご存じだったのではないか、手術や延命措置は望まず、あるがままにいのちが尽きるのを待っていたのだろうか。「ぴんぴんころり、が私の理想なの」と明るい声で話されていたのを思い出す。
10月に入ってヨガ・クラスの仲間と「未だに信じられない、あんなにお元気だったのに‥」と話していると、誰かが口を開いた―「K先生のことだからあの世でもヨガ・クラスを立ち上げて、張り切っていらっしゃるんじゃないかな。私たちがいつまでもメソメソしていると笑っておられるわ」。 確かに、私もそんな気がしてきた。そのクラスに入れてもらえるよう、K先生の教えを胸に心もからだも鍛えていこう。