福祉のあれこれ

片岡亮太君のライブを聴いて

2018.11.3

フレンチホルンと和太鼓

 10月20日の土曜日久しぶりにライブに行ってきた。フレンチホルンと和太鼓のユニークなユニットAjarriaのライブである。場所は吉祥寺のおしゃれな空間、MANDA-LA2。Ajarriaは、教え子の片岡亮太君と彼のパートナー山村優子さんからなるユニットで、結成7周年を記念してのライブだった。

 片岡君との出会いは2003年、私が上智大学に赴任した年に入学した新入生のひとりだった。新入生ガイダンスで、全盲の学生としてちょっと不安そうな面持ちで座っていた姿が印象に残っている。大学での受け入れ体制が今ほど整っていない時期で苦労も多かったと思うが、片岡君はつねに主体的に勉学に取り組み、社会福祉現場実習もこなして首席で卒業した。彼の積極さや明るさはクラスメートにとてもよい影響を与え、彼を中心にクラスがまとまっていった。

 卒業間近に片岡君から「実は、プロの和太鼓奏者になりたいんです」と「告白」を受けたときはびっくりした。盲学校時代に出会った和太鼓に打ち込んでいたのは知っていたが、てっきり福祉分野に進むものと思っていたからだ。家族の反対を押し切って、彼は地元静岡の沼津市を拠点に演奏活動を始め、ニューヨークに留学。ニューヨークで山村優子さんというすばらしい伴侶を得て、今は演奏や講演、執筆活動に忙しく過ごしている。

 当日のライブは幅広い年齢層のお客さんでほぼ満員となった。片岡君が司会をしながら、パーカッショニストとしてさまざまな楽器の演奏を繰り広げ、唄も歌い、山村さんのフレンチホルンとの共演をはさむというスタイルだった。ホルンの音色は伸びやかで心地よかったし、二人で作曲したというオリジナルの4曲も旅先での景色をイメージさせる素敵な音楽だった。片岡君が独奏した太鼓の曲(タイトルは聞き取れなかった…)は、マニアックな響きがあり謎めいた世界を創り出していた。

 何より片岡君は声もよく、場の雰囲気をつかむのがうまい。ライブ全体にお客さんを巻き込んだ楽しい空気感を醸し出していた。表現者として成長しているなあとしみじみうれしく思った。そして、この夏から秋にかけて親しい人を見送った私にとっては、太鼓の魂を揺さぶられるような響きに、鎮魂と共にいのちの力を感じ取ることができた。

 今回のライブのテーマは「誉(ほまれ)」だという。来年はどんなテーマで音を紡いでいくのだろう。この若いAjarriaの成長を楽しみに見守っていきたい。

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