福祉のあれこれ

2023年度を振り返って 想い出多き1年

2024.7.10

 2023年度は上智大学の卒業生との集まりをもったり私自身の大学時代の同窓会があったりと、懐かしい出会いが多くあった。研究テーマの被害者支援についても、さまざまな仕事が舞い込み、忙しくも充実した日々を過ごすことができた。いくつか記しておきたい。

4月 上智の実習指導室を担ったIさんの退職を祝う

 上智大学社会福祉学科の現場実習を30年の長きにわたって支えてくださったIさんが3月で退職された。Iさんの歓送会を計画し、小さな自宅に招待。サプライズで卒業生にも参加してもらった。夕食を共にしながら、昔の80日間実習を体験した人から近年の30日間実習の体験者まで、Iさんにお世話になった感謝がさまざまに語られた。「現場実習を経験しなかったら、今の自分はない」「Iさんに支えてもらったことが大学時代の一番の思い出」など、ソーシャルワーク実習を重視してきた上智大学のよさをしみじみ感じた夜だった。

6月 大学院ゼミ生の集い

 大学院で指導した教え子が集う勉強会を自宅で開いた。昨年まではオンライン参加の人もいたが、今年は全員リアルに集うことができた。児童福祉現場の最前線で働いている人、障がい者施設の管理者として重責を担う人、犯罪被害者支援の現場で相談支援に従事する人など、職種は違うが共通基盤はソーシャルワーク。お互いの近況を報告し合い、刺激を受ける半日となった。

7月 私の出身大学・早稲田大学心理学専修の同期会

 7月1日雨の中、大学の同期会を懐かしの早稲田で開いた。卒業して実に40数年ぶり! 20数名の参加があり、学生時代に助手や副手だった先生もお見えになった。その先生の案内で、現在の戸山キャンパスを見学。私たちの時代と打って変わって何ときれいなキャンパスになったことだろう、今の学生たちは恵まれている。同窓生はWASEDAらしい面々が揃っていた。総じて女子は昔の面影を残している人が多かったが、男子は?? 社会に一石を投じるべく活動している人も目立った。私もしっかりしなくては!

8月 長崎で被害者支援にかかわる講演を実施

 長崎県における犯罪被害者等施策の総合的推進に関する事業として実施された「犯罪被害者等支援研修会」に講師として呼ばれた。県市町、警察等の職員を対象に、「自治体における犯罪被害者等支援のあり方について」と題して、①被害者支援はどこまで進んだか(第4次犯罪被害者等基本計画のポイント、国の新たな方向性)、②被害者の声から求められる支援とは、③自治体の支援のあり方について話した。会場には約40名の参加があり(オンライン配信もあり)、熱心に聞いていただいた。

 長崎県は令和3年までに県及び県内全ての市町において被害者支援条例の制定が完了し、支援に向けた体制が整いつつあるが、相談支援の取扱い件数がまだ少なく人材の育成が課題という。犯罪被害はどこでも起こり得るという意識をもって、被害にあわれた方々に自治体としてすぐ手が差し伸べられるよう、地道な研修を重ねていってほしい。

 なお、この出張では長崎市東出津町にある遠藤周作文学館にも足を運んだ。この年(2023年)は作家・遠藤周作の生誕100周年であり、美しい海を見渡しながら、遠藤周作の作品群に思いを馳せることができた。こうした機会が与えられたことに感謝している。

9月 法務省中央更生保護審査会の視察で松山へ、数十年ぶりで訪れる

 愛媛県松山は私が大学教員としてのスタートを切り、7年近くを過ごした地である。40代半ばで転勤となり、松山を出てからなかなか訪れる機会がなかったが、今回法務省の視察として訪問することができた。東京育ちの私にとって、自然豊かな松山は楽しい想い出がたくさん詰まった土地である。昔の「恋人」に会うような気持ちだったが、訪れてみる空港は立派になり、道路は整備され新しい建物が立ち並び、変わらないのは海の碧さだけ‥ 「浦島太郎」の心地であった。

 視察場所は、松山刑務所、大井造船作業場、松山学園(少年院、令和5年度で閉鎖)、松山少年鑑別所、あさなみワークキャンプ(NPO法人自立準備ホーム)、松山保護観察所、雄郡寮(愛媛県更生保護会)。文字で情報を得るのと、実際に足を運ぶのとでは大違いだった。いずれも、加害者の更生に向けてきめ細かな対応していることがよく分かった。松山刑務所長の「今、矯正は変革期を迎えている」との言葉が印象に残った。2025年6月には、現在の懲役と禁錮が一本化され拘禁刑となる。更生が重視され、どのような教育・指導が行われるようになるのか、関心を持ち続けたい。

9月から、政府の「犯罪被害者等施策の一層の推進について」を受けて有識者検討会始まる

 犯罪被害にあった人の現状をみると、適切な支援が届いていないことが多く、地域によって支援の格差があることは否めない。経済的支援もまだまだ不十分である。そのような状況を改善するために、政府は令和5年6月6日「犯罪被害者等施策の一層の推進について」を決定し(https://www.npa.go.jp/hanzaihigai/whitepaper/2023/zenbun/siryo/siryo-4.html)、「犯罪被害給付制度の抜本的強化」「犯罪被害者等支援弁護士制度の創設」「地方における途切れない支援の提供体制の強化」など今後進めるべき5つの取組を定めた。この取組のうち、私は「地方における途切れない支援の提供体制の強化」に関する有識者検討会に関わることになった。1年以内をめどに結果を出すべく、9月から本格的に検討が始まった。まず、現状を把握するために全国の自治体を対象にしたアンケート調査を実施、さらに支援現場の実情を知るためヒアリング調査を実施した。

 それら調査結果と8回に及ぶ検討会での討議を踏まえて、2024年4月には「取りまとめ」を提出することになっている(詳しくは2024年度の「私のHP」で)。

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