ゼミ紹介

ゼミ生の参観レポート

国立武蔵野学院を参観して

 2016年7月6日、ゼミ生31名とともに国立武蔵野学院を参観させていただいた。国立武蔵野学院は、さいたま市にある厚生労働省所管の児童自立支援施設である。東京ドームの約2倍の敷地に、田んぼ、畑、竹林、グラウンド、プール、体育館、寮舎などがあり、訪れてまず驚くのはその広さと自然の残る環境である。非行などの逆境を経験した子どもたちにとって、こうした環境で暮らし農作業やスポーツに励み自然に触れることは、いわば人間が本来もっている健全な力を呼び覚ますきっかけになるのかもしれない。

 上智大学社会福祉学科の卒業生が副寮長を務めている寮舎も(子どもたちのいない時間帯に)見せていただき、普段の生活の様子や副寮長としてのご苦労など伺うことができたのも大きな収穫であった。

 以下に、ゼミ生の参観感想レポートを載せる(短時間でまとめたレポートなので、不十分な点があることをお断りしておく)。

 

4年 S.M.

 今回、武蔵野学院に参観して感じたことは二つあります。一つは想像していた以上に、施設内が広いということです。参観するまでは、寮と学校しかないと思っていましたが、実際は森、畑、竹林、川、運動場などがあり、とても広かったためとても驚きました。施設の方の話にもありましたが、自然環境とともに生活していくことで、生活も安定していき、成長していくのではないかと感じました。

 二つ目は、子供たちが家庭復帰を望んでいるということです。寮の七夕の短冊に「家に帰りたい」という望みを書いている子供たちが多くいたのを見て正直驚きました。自分だったら、ほかの人のように家族で暮らせず、施設に入っているのは親のせいだと思ってしまうと思うので、家庭復帰はあまり望まないと思います。しかし、実際に子供たちの願いを見て、施設で暮らしていてもやはり親の愛情というのを感じたいのではないかと感じました。今回、施設を参観させていただくという貴重な体験をすることができたので、この経験を忘れずに、家庭復帰を望む子供たちのために、自分に何ができるかということを考えていきたいと思います。

4年 K.K.

 今回初めて児童自立支援施設を訪問して、とても開かれた施設であると感じた。非行の進んだ少年などが行く施設であるため、塀などが高く存在したりしているのかなと思っていた。しかし、実際には逃げ出そうと思えばすぐに逃げ出すことができそうな造りであった。その背景には、非行などによって武蔵野学院に来ている子がほとんどであるが、子どもということもあり、「更生」して社会で再び生活することができるようにするためでもあるのではないかと考える。また、これまで生活モデルがなかったり、家族関係や人間関係がうまくいってなかった子どもたちに対して、生活を通して信頼関係の作り方や生活の仕方を身につけて、社会に出て再び生活していく場であると感じた。また、その一方で、施設内で規則正しい生活をおくれていたとしても、出所後、急に自由になり生活が児童自立支援施設に入所する前の生活に戻ってしまう可能性もあるのではないかと疑問も出てきた。

 私にとっては児童養護施設や自立援助ホームなどと異なる施設を見学することができてとてもいい勉強になった。

3年 A.K.

 国立武蔵野学院に伺い、まず驚いたことは、広大な敷地である。森の中に施設があるようだった。広大な自然の中で農作業や運動を行うことによって、心身の緊張を緩め、穏やかな時間を過ごすことができると思った。しかし、少年たちは、平均1年半後にはこの施設を退所するということを考えると、このあまりにも静かで穏やかな環境に慣れることは、退所後、施設と施設外との環境の差に戸惑うことに繋がるとも考えられる。

 非行少年を「育てる」ために何ができるかを考えることが、児童自立支援施設の重要な理念だということが分かった。今回、夫婦小舎制の寮に入り、少年たちと寮で暮らす職員の方からお話を伺って、「虐待経験や発達障害を抱える子が多いということ」を再認識し、少年たちの多くは、この施設へ入所するまで、生きづらい環境で育ってきたのだろうと想像した。

 家庭環境や障害の程度が一人ひとり異なる中で、職員が少年を「育て直し」することは、容易なことではないと思う。非行少年を育て直す環境づくりは、施設ごとに全く異なるものではないかと思う。他の施設の様子も知りたいと思った。

3年 K.H.

 今回の参観の感想として、一言で言うと、「メリハリのついた支援」体制が充実していると感じた。アメとムチではないが、まずお話の中で、「施設に入ってくる子供たちの特徴を的確に捉え、初めは自己肯定感が低いという特徴から、支援のなかで褒めることを意識し、信頼関係を築き、自己肯定感をアップさせるといったような、一貫した、計画性のある支援をしている」と伺った。これは自分がペアプレゼンで、発達障害の子へのかかわり方について取り上げた支援方法であり、全児童の68%が障害を抱えている当施設だからこそ、そういった支援が必要になってくるのだろうと感じた。一方で、強制的措置のような、必要に応じて児童の自由を制限するような仕組みがあることには正直驚いた。しかし、その措置にも、ただの監禁という意味合いではなく、きちんと「子どもたちの心を落ち着かせる」といった目的が存在し、部屋にもそのような配慮がしてあるところに、改めて目的をもった支援の一貫性、計画性を感じた。

3年 Y.M.

 国立武蔵野学院を見学して感じたことは、主に二つである。一つは、子供たちがこの施設に入って自分に自信が持てるようになるということ、二つ目は自然と触れ合うことで更生の手助けとなるという考えがあるのではないかということである。

 施設の職員からのお話で、この施設に入るまでは、自分の短所は多く言えるが長所は言えなかった子が、施設を出るころには自分の長所を言えるようになるというのが、印象的だった。施設には、虐待経験や障害のある児童が多く、自分に対する評価が低く、非行に走ってしまった子が多いのではないかと思った。武蔵野学院では、子どもを褒めることを意識しており、家庭であまり褒められなかった子が初めて自分の良いところに気付くことができ、そのことも更生につながってくるのではないかと思った。

 また、参観してみて広大な敷地と自然と触れ合う行事が多いことに驚いた。今まで物を壊すなどの行為を行ってきた子供たちが、田植えなど自分で何かを育てる経験をして、食物の大切さを学んだり、自然の中で心が癒され落ち着いたりしながら、本来の優しさを取り戻していくのだと分かった。

3年 R.O.

 参観して一番印象に残っているのは、七夕の短冊に「早くお家に帰りたい」という願い事を見たことであった。しかし、入所している多くの少年たちは“家庭”の中で育つということを経験していない。事前学習でも少年の多くがひとり親世帯であるとわかった。両親がいるという家族モデルでなければならないとは全く思わないが、片親でも祖父母からでも十分な愛情を注がれて育つということが大人に至るまで重要であるのではと思う。

 入所してから、退所に至る理由の多くは家庭の引き取りであるという。入所して社会的スキルが上がったとしても、退所してからはどうなのだろうか。家庭環境の整備は行っていると聞いたが、果たしてどのようなことを具体的に行っているのか、自分でも調べていきたいと思った。また、児童自立支援施設が行えることは現在の業務内容から考えると、アフターケアや家庭環境の整備まで十分に行いきれないのではと思った。だから、そうしたことを中心として行える機関があれば、児童自立支援施設と連携し、退所後の安定な生活に寄与できるのではないかと考えた。

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