ゼミ紹介

ゼミ生の参観レポート

愛光女子学園を参観して

 7月31日強い陽ざしが照りつけるなか、ゼミ生8名と共に愛光女子学園を参観させていただいた。愛光女子学園は狛江市の住宅街にある女子少年院で、私は10年近く前にもゼミで訪れたことがある。クリーム色の建物の中には小さな庭やきれいなプールがあり、小規模の学校のような印象を受けた。ただ、「生徒」たちは同じ色のジャージを着てうつむき加減、表情を見ることはほとんどできなかった。今回も同じような雰囲気だったが、職員の方の詳しい説明を伺うことができ、現在の女子少年の非行問題について新たな角度から考える機会となった。ゼミ生がフレッシュな感想を寄せているので、以下にそのレポートの一部を載せる。

 今回は私にとって嬉しいことが1つあった。上智大学社会福祉学科の卒業生が法務教官として愛光女子学園に勤めていたことである。働き始めてまだ数カ月、苦労も多いと思うが、大学で学んだことを活かしてよき導き手になってほしい。

4年 R.M.

 日本で初めてできた女子少年院である愛光女子学園を訪問した。刑務所のように、灰色の壁に厳重に拘束する扉などをイメージしていたが、光の差す明るく綺麗な部屋で、授業を受ける生徒たちは私語をせず真面目に机に向かっていた。虐待などの暮らしにくい環境が非行を引き起こしてしまう大きな要因であるにもかかわらず、その社会に戻るために真剣に授業に取り組む姿がとても印象的であった。(中略)

 愛光女子学園では普通の学校のように授業のカリキュラムが組まれ、単位取得のため休日も授業が行われている。係活動や自分と向き合う時間も存在し、残りの余暇の時間をほとんどの子ども達が資格の勉強にあてると聞いた。普通に学校に通う子どもたちよりも勉強熱心に見え、彼らを応援したいと思うと同時に、退院後に社会が彼らを受け入れてくれるのか心配に思った。愛光女子学園では周りが住宅街で覆われているため、体育の時間にグランドを使用するときは、近隣住民に顔が見られないようサンバイザーを着用して外に出るという。必要な行為だとは思うが、生徒達が近隣住民から身を守るというのはそれだけ中傷の目がある証拠ともいえるのではないかと感じた。少年院で努力している子どもたちが社会に帰った時に報われるためには、彼らを受け入れてくれる暮らしやすい環境がなければならない。何より社会資源の確保と地域住民の少年非行に対する理解が大切だと感じる。

4年 M.T.

 愛光女子学園の参観でまず感じたのが、温かみと明るさである。刑務所に比べて色味や木材などが多く使われていたため、私たちと変わらない女子が生活している雰囲気が見受けられた。また施設内は清潔に保たれており、その生活の運営のほとんどを生徒たちが担っているということで、時間割に沿って規則正しい生活をしながら自分たちの生活環境の整備を行っているようだった。当初イメージしていた少年院は、非行に及ぶ少年たちの暴言暴力などといった荒れた環境であったが、愛光女子学園の中ではそのような様子は全く見受けられず、授業に参加している生徒たちの熱心な様子や整った生活環境が印象的であった。

 また施設の職員の方が生徒たちを想う気持ちが親のようであるという印象も受けた。施設の方の話の中で何度も「その子に合わせた」というフレーズが出てきたが、これは刑務所という環境の中で生活するいわば受刑者に対して使われる言葉ではなく、一人ひとりを未来ある人間として捉えている象徴であると感じた。例えば集団生活を行う部屋の中に置かれていたぬいぐるみに関しても「生徒から抱っこできるぬいぐるみがあると安心するという声があって用意した」というお話をされており、少年の精神面におけるケアも十分に配慮されていると感じた。また施設内で少年同士の喧嘩や揉め事が生じた際にもまず一人ひとりの話をよく聞き、何を考えどんな気持ちを持っているのか知ってどうするべきだったかを丁寧に教えていくという作業は、決して簡単なものではない。日々のコミュニケーションの中で少年との信頼関係を築いてこそ少年の心の更生に意味を持たせることができるものであると感じた。

 そして少年院に入っている少年の多くが自傷行為や虐待体験をしているということについて深い興味を持った。成人であっても生育環境が及ぼす影響が大きく、十分な社会資源が与えられていないことは犯罪のリスクを高めると考えられているが、少年においてはそれが顕著であると考える。施設の職員の方のお話の中で印象的であったのが、少年院卒院後の引き取り手がいない場合があるということである。非行に手を染めなくてはならない状態に追い込まれた子どもが、少年院で社会復帰を目指して更生してもそれを受け入れてくれる環境が整っていないという問題は深刻であり、社会的課題と捉えるべきであると感じた。

3年 X.Y.

 今回の参観を通して非行少年や少年院について色々考えた。まず、非行少年の更生と社会復帰は決して簡単ではないことだと思った。少年院できちんと教育を受けても、退園後家族や社会に受け入れてもらえないこともあると聞いた。偏見や差別は、少年たちの社会復帰の阻害となると思われる。そのため、少年への社会復帰支援を行うだけではなく、社会の一人ひとりが退園後の少年に対する認識を変えなければならない。

 そして、矯正教育を全部受ければ、本当の意味で更生できたといえるだろうか。それを判断するのは難しいとも思った。更生の程度がわかるテストなどがあるとよいかもしれない。また、少年の更生と社会復帰の支援には、少年院の支援はもちろん、社会からの支援と地域との連携も必要だと考えられる。愛光女子学園では、地域の住民にご飯を作るのを手伝ってもらったり、浴衣の着方を指導してもらったりしているそうだ。愛光女子学園での更生と社会復帰支援には地域住民たちも参加していることが分かった。このように、地域と関わりをもち地域資源を利用することは少年たちの更生と社会復帰に役立つと考えられる。(中略)

 最後に繰り返しになるが、退院後に少年たちが家族や社会に受け入れてもらえるためには偏見や先入観などの認識を社会の側が変えていかなければならない。「少年院に入った子は悪い子だ」、「もううちの子ではない」などと思う人は少なくないかもしれない。しかし、家族や社会に受け入れてもらうには、少年たち自身の努力はもちろんだが、社会の側にある根深い偏見や先入観を変えることが不可欠だと思う。

ゼミ紹介