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科研費による研究
2021年度 インタビュー調査
「被害からの回復」に関する犯罪被害者調査のインタビュー結果報告
この犯罪被害者調査では、犯罪被害にあった方々を対象にオンライン調査(量的調査)とインタビュー調査(質的調査)を実施しました。ここでは、2021年に実施したインタビューの結果について報告します。
※オンライン調査(量的調査)の全体結果は、後日アップします。量的調査の分析結果の一部は、「2020年犯罪被害者調査」に掲載してあります。
インタビュー調査には計22名の方にご協力いただくことができました。コロナ禍が続きそれぞれにご負担や心労のあった時期に、このインタビューのためにお時間を割いて下さいました。その貴重な語りがこのHPに収められています。
このHPは、つぎのような構成でまとめています。
- ■ インタビュー調査の概要
- ■ 被害種別ごとの結果
Ⅰ.性被害にあった方の語り
Ⅱ.交通被害にあった方の語り
Ⅲ.身体的な被害(殺人、傷害等)にあった方の語り - ■ まとめ:被害者支援はどうあるべきか
- ■ インタビューを実施して(インタビュアーの声)
被害種別ごとの結果は、各テーマについてのPDFファイルになっています。やや長文にわたるファイルもありますが、どこから読んでいただいても構いません。ぜひ「被害にあった方々の声」に耳を傾けてください。犯罪被害が個人的な問題ではなく、社会的課題であることがよく分かると思います。このHPを通してどのような被害者支援が必要か、ともに考えていただく機会になれば幸いです。
調査結果についてのご感想、ご意見などありましたら、研究責任者の伊藤(fujie.ito66@gmail.com)までメール(件名:インタビュー調査の件)をお願いします。
なお、このHPについての無断転載はお断りします。
インタビュー調査(「被害当事者の声からみえてくる被害者支援」)の概要
1.インタビューの目的
犯罪被害による影響、被害後の変化(被害回復)、必要な支援などについて明らかにする。
2.インタビューの実施
自記式質問紙のオンラインによる犯罪被害者調査を実施し(2020年10月~12月)、その調査のなかでインタビューの協力者を募った。協力の同意を得られた方に対してWeb会議システム等を使って、インタビューを実施した(2021年6月~11月)。インタビューの録音・録画について事前に確認し、全員から録画・録音の了承を得ることができた。
最終的にインタビューに協力いただいた方は、計22名の被害当事者、家族、遺族で、居住地は東北、北陸、関東・甲信越、近畿、九州地方に及んだ。協力者の被害種別は以下のとおりである。
- 性被害 8名
- 交通被害 9名
- 殺人(傷害致死) 4名
- 強盗致傷 1名
3.インタビュー結果の分析方法
22名から得られたインタビューデータを、①性被害(8名)、②交通被害(9名)、③身体的な被害(殺人、傷害等)(5名)の被害種別に分けた。インタビューの平均時間は、性被害:約68分、交通被害:約80分、身体的な被害:約70分であった。データを質的研究手法であるロングインタビュー法によって分析し、カテゴリー化し、研究チームで検討を重ね報告文にまとめた。
報告文は、協力者の方々の語りを大切にする形で、つぎの5つのテーマにそってまとめた。(1)被害の実態とその影響、(2)適切だった対応・支援、(3)不適切/不十分だった対応・支援、(4)被害後の変化・「回復」とは、(5)被害者支援に関する要望・社会への発信。
なお、インタビュー結果の分析内容については、協力者全員から確認と公表の了承を得ている。
4.倫理的配慮
本インタビューは、文部科学省及び日本学術振興会が交付する科学研究費助成事業基盤研究(C)(研究課題:犯罪被害者の「回復」過程を促進する要因に関する研究/課題番号:19K02221/代表者: 伊藤冨士江)の一環として行ったもので、「上智大学「人を対象とする研究」に関する倫理委員会」の承認を受けている(承認番号2020-93)。
5.謝辞
インタビューの実施にあたっては協力者のみなさまの多大な協力を得ることができました。ご多用の中、しかもコロナ禍にあってインタビューにご協力たいだいたことに、改めて深く感謝いたします。
6.参考文献
- Grant McCracken (1988) The Long Interview, SAGE Publication
- 熊倉伸宏・矢野英雄 (2005)『障害のある人の語り インタビューによる「生きる」ことの研究』(誠信書房)
- 大谷 尚(2019)『質的研究の考え方』(名古屋大学出版会)
被害種別ごとの結果
Ⅰ.性被害にあった方の語り(8名)
性被害と聞いてどのようなことをイメージされるでしょうか。夜道に一人で歩いていて突然襲われて‥といったことを思い描く方が多いかもしれません。しかし、性被害は普通に生活しているなかで起きており、子どもに対する被害も多く、実にさまざまな形の被害があります。被害の暗数が多く、潜在化しやすいのも性被害の特徴です。このインタビューに応じてくださった方々は、被害経験とその影響の大きさ、被害後にどのような支援を受けることができたか、あるいは受けることができなかったか、また被害後に生じた変化、被害回復の状況、さらに被害者のための支援への要望などについて、詳しく語ってくださいました。その貴重な語りのなかには、私たちが知るべきこと、考え行動を起こす必要のあることが数多く含まれています。
今回のインタビューにご協力くださったのは計8名の方(すべて女性)で、概要はつぎのとおりです。8名のうち、7名が被害者ご本人、1名が被害者の母親で、インタビュー時の年齢別は20代1名、30代5名、40代2名でした。本人が被害にあったときの年齢別は、10歳未満1名、10代前半2名、10代後半2名、20代2名、30代1名で、加害者との関係をみると、無関係・知らない人5名、知人1名、担任教諭1名、カウンセラー1名でした。
なお、語り末尾の(番号)は、同一人の発言を意味する便宜上の番号です。
- (1)被害の実態と影響【PDF 1.7MB】
- (2)どのような対応・支援を適切だと感じたか【PDF 1.7MB】
- (3)どのような対応・支援を不十分/不適切だと感じたか【PDF 1.7MB】
- (4)被害後の変化・「回復」とは【PDF 1.7MB】
- (5)被害者支援への要望・社会への発信【PDF 1.6MB】
Ⅱ.交通被害にあった方の語り(9名)
交通事故の発生件数は2005年以降減少を続けていますが、悪質な運転による事故は跡を絶たず、全国の民間支援団体で支援しているケースをみると交通被害が3番目に多くを占めています。このインタビューに応じてくださった方々は、被害経験とその影響の大きさ、とくに刑事司法手続で感じた理不尽さ、被害後にどのような支援を受けることができたか、あるいは受けることができなかったか、また被害後に生じた変化、被害回復の状況、さらに被害者のための支援への要望などについて、詳しく語ってくださいました。交通被害ならではの語りも多く含まれ、何を改善すべきかが示されています。
今回のインタビューにご協力くださったのは計9名の方で、概要はつぎのとおりです。9名すべての方は、事故によって家族を亡くされたご遺族でした(うち、1名の方は重体・重傷の家族も含む)。被害者との関係は、父親が3名、母親が3名、夫が1名、叔母が1名、義理のむすめ(きょうだい)が1名で、インタビュー時の年齢別は40代2名、50代3名、60代2名、70代2名でした。被害にあった時期は1990年から2017年と幅がありました。
なお、語り末尾の(番号)は、同一人の発言を意味する便宜上の番号です。
- (1)被害の実態と影響【PDF 1.7MB】
- (2)どのような対応・支援を適切だと感じたか【PDF 1.7MB】
- (3)どのような対応・支援を不十分/不適切だと感じたか【PDF 1.7MB】
- (4)被害後の変化・「回復」とは【PDF 1.7MB】
- (5)被害者支援への要望・社会への発信【PDF 1.7MB】
Ⅲ.身体的な被害(殺人、傷害等)にあった方の語り(5名)
最後に、殺人(傷害致死)、強盗致傷の被害にあったご遺族、ご家族の声を取り上げます。ご遺族の一人は「自分が被害者になるまでは殺人事件のニュースを見聞きしても、これはよその出来事だ、自分の家には起こりっこないと、何の疑いもなく思っていた」と語っておられます。犯罪被害は誰の身にも起こり得ることだという共通認識を持つ必要があります。このインタビューに応じてくださった方々は、被害経験とその影響の大きさ、被害後にどのような支援を受けることができたか、あるいは受けることができなかったか、また被害後に生じた変化、被害回復の状況、さらに被害者のための支援への要望などについて、詳しく語ってくださいました。その貴重な語りには示唆に富む内容が多く含まれています。
今回のインタビューにご協力くださったのは計5名の方で、概要はつぎのとおりです。5名のうち、ご遺族4名(夫1名、妻3名)、被害者の長男1名で、インタビュー時の年齢別は20代1名、40代・50代・60代・70代が各1名でした。被害にあった時期は2000年から2012年で、加害者との関係は無関係・知らない人4名、元同級生1名でした。
なお、語り末尾の(番号)は、同一人の発言を意味する便宜上の番号です。
- (1)被害の実態と影響【PDF 1.5MB】
- (2)どのような対応・支援を適切だと感じたか【PDF 1.4MB】
- (3)どのような対応・支援を不十分/不適切だと感じたか【PDF 1.5MB】
- (4)被害後の変化・「回復」とは【PDF 1.4MB】
- (5)被害者支援への要望・社会への発信【PDF 1.4MB】
まとめ:被害者支援はどうあるべきか
このインタビューでは、「どのような対応・支援を不十分/不適切と感じたか」「被害者支援への要望・社会への発信」について、協力者の方々から多くの意見を寄せていただきました。被害当事者となってはじめて見えてきた支援のあり方、社会のあり方などについて、貴重な声をもとに提言として、以下にまとめます。
1.情報提供について:被害後早期に適切な情報の提供を
- ✔ 被害にあった本人、家族、遺族(以下、被害者等)は、被害直後「何をしたらよいかが全然分からない」場合がほとんどであり、被害後の司法手続、役所の手続、相談窓口、受けられる支援内容、犯罪被害に詳しい精神科医・医療機関など必要な情報を速やかに提供する必要がある。
- ✔ 性犯罪、交通被害、身体的な被害、侵入盗など被害種別ごとに、必要な情報を提供できるよう整備することが必要。そのためのマニュアルがあるとよい。
- ✔ 支援に関する情報を提供する際は、被害者等の心理状態に配慮し、情報が記載されている冊子(リーフレット)などを手渡すだけでは不十分。どのような内容が載っているかを口頭でも丁寧に説明したり、機会あるごとに被害者等の理解を確認したりすることが必要である。
- ✔ 被害者等が必要な情報については、警察、検察などの刑事司法機関、医療機関、民間支援団体、自治体など関係機関・団体で共有し、ガイドラインをつくるなどして多層的に提供できるとよい。
2.警察の対応について:警察にしかできないきめ細かい対応を
- ✔ 警察は「真実を突き詰める」という点から丁寧な捜査を第一とし、被害者等と十分なコミュニケーションをとるようにしてほしい。
- ✔ 警察の捜査状況については、(不安感を増幅させないためにも)被害者等に適宜的確に伝え、被害者等に質問する際は質問の意図を明確に伝えることが大事である。
- ✔ 事情聴取・実況見分においては被害者等の負担を考慮してほしい。長時間にわたる事情聴取は被害直後の被害者等にとって大きな心身の負担となる。被害者等の心身状態をつねに確認し、対応してほしい。
- ✔ 事件・事故で被害者が亡くなった場合、ご遺体の安置場所、遺族への連絡の仕方や対面時の付添、その後のフォローなど丁寧な対応が必須である。地域や警察署によって差異があってはならず、警察における一定のマニュアルがあるとよい。
- ✔ 女性の性被害者にとって、警察署での女性警察官による対応は欠かせない。性的被害を受けた直後に必要な細やかな配慮は、男性警察官のみでは行き届かないことがある。
- ✔ 性被害で被害届を受理できない場合や不起訴とする場合には、その理由を丁寧に説明してほしい。勇気を出して警察署に行った被害者側の心情への理解がないと、被害者はさらに傷ついたり絶望感を抱いたりしてしまうことになる。
- ✔ 警察に性被害の訴えがあっても被害時から年数が経ち時効となっている場合、被害者本人の心情を汲み取り、民間支援団体、医療機関など適切な関係機関につなぐことが必要。そのためにも、関連機関との日頃からの連絡調整が大事である。
3.検察の対応について:被害者等が理解しやすい説明を
- ✔ 検察は被害者等の心情をもっと理解した支援をしてほしい。たとえば、「いっしょに怒る」という気持ちを表すことも必要。
- ✔ 事件が不起訴になる場合、あるいは起訴する場合の罪名、求刑については被害者等に分かるような形で丁寧に説明してほしい。
- ✔ 公判での意見陳述については、被害者等にとっては全くはじめてのことなので十分な事前説明や助言が必要。
- ✔ 担当検事の異動について、直前の通知は被害者等にとって動揺や不信感を招きやすい。早目に知らせ、引継ぎ等についても説明しておく必要がある。
4.公判での対応について:さらなる被害者等への配慮を
- ✔ とくに性被害を受けた被害者が公判で証言する場合、被害者への配慮(証人への付添い、証人の遮へい、ビデオリンク方式の措置)について、裁判所の判断によってこうした配慮が行われる/行われないことがあるという点を事前に説明しておくことが必要である。
- ✔ 公判で、被害者等にとって(防犯カメラ等による)犯罪行為の映像を複数回見ることになるのは、大きな精神的負担になるので、事前の調整をしてほしい。
- ✔ 被害者参加弁護士を増やし、被害者等の心情に関する知識も身に着けてサポートしてほしい。
5.被害者等通知制度の通知内容について
- ✔ 更生保護における被害者等通知制度について、加害者(保護観察対象者)の保護観察中の面接回数だけでなく、加害者の反省や就労状況が具体的に分かるものに改善できないか。
6.民間支援団体(センター)について:支援内容や運営をもっと充実したものに
- ✔ センターが提供できる支援ついて、被害者等に分かるように丁寧に説明する必要がある。
- ✔ センターは被害者側に寄り添った支援のできる団体として、相談員の質を担保し、相談員の教育・助言を担うスーパービジョン体制も整備すべきである。
- ✔ 被害者自身の意見をセンターの中で受け止め、それを反映するセンターであってほしい。
- ✔ センターは基本的にはボランティア任せにせず、専門家集団であるべきで、被害者等の社会生活そのものを支援していく視点をもってほしい。
- ✔ 相談員の次世代養成も視野に入れた運営をしてほしい。
- ✔ 将来的には、センターは被害者等にとって地元の身近なところにあって、24時間体制の対応が可能となることが望ましい。
7.自治体の犯罪被害者総合対応窓口について:もっと支援内容の整備・充実を
- ✔ 被害者等は「役所には死亡届なり何かしらの届け」を出しに行くので、そのさいに被害後の支援について情報を提供してほしい。
- ✔ 家事、育児、介護など生活支援のためのサービスを、被害後すぐに利用できるよう整備してほしい。
- ✔ 自治体の被害者対応窓口においても、裁判等の付添支援をできるようになってほしい。
- ✔ 将来的には自治体に「被害者支援ワンストップ課」のような部署ができて、センター等とも連携しスムーズな支援が展開できるようになるとよい。
8.医療機関における対応について:犯罪被害への理解を
- ✔ 犯罪被害を受けた者に対する治療費の情報について早目に伝える必要がある。
- ✔ とくに性被害にあった被害者に対する診察については、被害者の年齢や被害直後の心理状況に十分配慮してほしい。
9.犯罪被害を受けた児童・生徒に対する学校の対応について:体制整備を
- ✔ 犯罪被害を受けた児童・生徒に対して、事情の聴き方とその後のフォロー、保護者への連絡、関係機関への連絡などに関して一定のマニュアルを作成しておく必要がある。
- ✔ 学校の教職員が研修等において、犯罪被害後の対応や被害者支援について学べるようにし知識を身に着けてほしい。
- ✔ とくに性被害を受けた児童・生徒に対しては、何度も事情聴取することがないよう、教員間で情報共有するなど児童・生徒の心的負担への配慮を徹底する必要がある。
- ✔ 被害者本人のみならず同級生など他の児童・生徒も何らかの形で傷ついている場合が多く、ケアやフォローに留意すべきである。
- ✔ 学校の責任において、被害相談の窓口を児童・生徒に対して周知する必要がある。
- ✔ 児童・生徒が不慮の事故・事件で亡くなった場合、学校としても丁寧な見送りができるようご遺族に協力する必要がある。そうした配慮がご遺族の回復にもつながる。
10.マスコミの犯罪報道について:報道被害の対策を
- ✔ 被害者等が受けたマスコミによる報道被害について、マスコミは真摯に受け止め改善してほしい。
- ✔ 被害者等の声をもとに、報道被害、二次被害を防ぐための取材のあり方、報道の仕方についてガイドラインを作成し、記者研修を行うべきである。
11.支援機関・団体の連携について
- ✔ 警察、自治体、センター、医療機関、自助グループなどで横の連携をとれるようにして、被害者等のための長期的な支援ができるようになってほしい。
- ✔ 将来的には被害者等が被害直後から法的支援と精神的ケアにつながるよう、多機関連携を推進し、その調整を担当する機関を決めておく必要がある。
12.社会のあり方:地域での安全を広げていくために
- ✔ 被害当事者が平穏な社会生活に戻れるようにするという視点からの社会資源やサポートが必要。
- ✔ 近年増えているSNSを通じた被害者等に対する誹謗中傷は、被害者等をさらに苦しめることにつながっており、社会の問題として捉え早急な対策が必要である。
- ✔ さらなる被害を生まないため、また二次被害を防止するためにも、被害者支援にかかわる広報啓発をもっと推し進めるべきである。
- ✔ 交通被害やいのちの大切さについて学ぶ機会を増やしてほしい。
- ✔ 一人ひとりが「優しいこころ」をもち、安全運転を自分事として捉える社会になってほしい。
インタビューを実施して(インタビュアーの声)
大岡 由佳(武庫川女子大学)
今回、殺人や性的被害、交通被害にお遭いになった様々な被害者のお話をお聞かせいただきました。その中で痛切に感じたことの一つに、被害者が、ある日を境に、如何に大変な日々をお送りになってきたかということが挙げられます。情報も十分に行き届いておらず、被害者が活用できる社会資源も限られる中で、半ば孤立しつつも、何とか懸命に前に進んでこられたことに深く敬意を表したいと思います。被害にあったことでよいことなどないわけですが、そこから何かを見出されたり、次の活動に繋げられているご様子からは多大な勇気と知恵をいただいた思いです。このメッセージを他者に伝えていくことこそ、調査を担った者の責務ととらえています。
大塚 淳子(帝京平成大学)
本調査に臨み、さまざまな犯罪による人生被害ともいうべき状況をお聞かせいただきました。コロナ禍に伴い直接お会いして伺うことが適わず、画面越しの調査に語りにくさをお感じになられないかと案じましたが、皆さまがご自身の体験が今後のためになるのならと熱心にお話しくださいましたことに、心から感謝申し上げます。時間の経過で解決することではない被害による深刻なダメージを改めて実感するとともに、さまざまな支えを得て普及活動や政策提言に尽力され始めた方々のお話から、少しでも同じ思いをする人をなくしたいという思いを感じました。一つでもできることを積み重ねていきたいと考えます。
平山 真理(白鷗大学)
法学の世界では、犯罪の被害や加害を研究する際も、紙の上での情報(法律の条文や判例)のみに基づいて考えることが多い傾向にあります。私も刑事手続における被害者の権利について長年研究してきたというのに、被害者の方々の声を直接お聞きする機会はこれまであまりありませんでした。このインタヴューでは、被害を経験された方々からお話を伺うことができましたが、被害経験はどれも深刻で、被害経験者の方々が淡々と話される場合も、その被害により受けてしまった苦しみがよく伝わってきました。また、法律や制度の「不親切さ」を改めて痛感しました。被害経験者の方々は発言することで制度を少しでも改善しようとされていて、その姿勢に感銘を受けました。
金田 康平(兵庫県立尼崎総合医療センター 本調査事務担当)
今回初めて、交通被害や殺人、性的被害等にお遭いになった被害者の方々へのインタビューに立ち会わせていただき、お話をお伺いする中で、被害者の方々が活用できる情報が少ないことや、その情報をキャッチするまでに時間がかかる、その期間も大変な日々を送られてきたお話等を聞かせていただきました。このようなお話含め、さまざまな方々への力になるよう活動していきたいと思います。貴重なお時間ありがとうございます。
伊藤冨士江(上智大学 研究代表者)
このインタビューには2つの目的がありました。まず、被害にあわれた方々(協力者)の声を直接伺い、どのような支援が必要なのかを明らかにすること。もう1つは、被害からの「回復」をキーワードに被害後の変化を分析することでした。結果の分析にあたっては、協力者の方の語りを大事にする形でまとめました。
犯罪被害の問題に長くたずさわっている私にとっても、協力者の方々の語りから多くの新たな気づきを得ることができ、改善すべき被害者支援の道筋がはっきり見えてきたように思います。またインタビューを終えて度々感じたのは、人がもつ「力」のようなもの(レジリアンスといってもいいかもしれません)でした。
このインタビュー結果が多くの人の目に触れ、被害当事者の方を中心に置いた被害者支援が展開されるようになることを願ってやみません。
最後に、インタビューを振り返ると、「こんな失礼な聞き方をして」とか「これは不適切な尋ね方だった」などと感じる場面が多々あり、反省しきりでした。それにもかかわらず、協力者のみなさまは、誠実に丁寧に、こちらに伝わるように語って下さいました。インタビュアーとしての力不足をお詫びするとともに、ご協力いただいたことに心よりお礼を申し上げます。